オペラ《カルディヤック》
ヒンデミットのオペラが日本で上演されることはとても稀です。
その例の一つが2013年3月1-3日に新国立劇場で上演された《カルディヤック》日本初演です。
まずあらすじ。
舞台は17世紀パリ。金細工師のカルディヤックの作品を持つ人が殺され、金細工が盗まれるという事件が起きている。
犯人は作者のカルディヤックで、なぜそんな犯行を行っているかというと、自分の作品が好きすぎて、売ったはいいけど自分の手元にないといられないようになってしまったからなのでした。(なんて自分勝手)
なんやかんやあって、結局カルディヤックの罪は白日の下にさらされる。主人公の破滅で幕です。
ひどい話だ。自分の作品に魅入られて人殺ししてては、その先には破滅しかないですよ。うん。
カルディヤックを狂わせる金細工、これは何を意味しているんでしょうね。わからないです。もしも自分にもカルディヤックにとっての金細工があったら、破滅しか道がないのかな、いやだな。
このオペラにはもとにした小説がありまして、E.T.A.ホフマン作「スキュデリー嬢」になります。
日本語訳されて、岩波文庫から出ているそうです。
E.T.A.ホフマン(1776-1822)はドイツの作家。でも曲かいたり絵をかいたりいろいろしている人。
モーツアルト(1756-1791)やベートーヴェン(1770-1827)と生きた時がダブっていますね。
彼の作品は国内外の作家や音楽家に影響を及ぼし、ホフマン作品からオペラやバレエを作ることもしばしばあったよう。
チャイコフスキー作のバレエ《くるみ割り人形》やオッフェンバック作のオペラ《ホフマン物語》がそれにあたります。
ヒンデミットのカルディヤックもこの流れの一つなんですね。
チャイコフスキーやオッフェンバックよりもヒンデミットは若いので、流行遅れな感じもしますね。
先人がやっていたことはとりあえずやってみようと思い立ったのか、売れると思って書いたのか、ホフマンに思い入れがあったのか、オペラ書きたいと思っていてたまたまホフマンと出会ったのかはわかりません。
台本のフェルディナンド・リオン(1883-1968)は、ジャーナリスト兼作家。
オペラの台本を書いたり、エッセイを書いたりしている人のようです。
オペラ《カルディヤック》は1926年11月9日ドレスデン国立歌劇場で初演されました。3幕オペラ。
そして1952年には4幕オペラに改作をします。お気に入りの作品は何でもこのころに改作してしまいます。
しかし、この改作で幕が増えた以外にどんな変化があるのかは知ることができません。
なぜなら比較する楽譜や音源をみたり聞いたりしたことないからです。いつか手に入れられるといいな。
というか、英語版ウィキペディアによると、1926年版しかレコーディングされていないようです。
心血注いで改作したはずなのに、報われない1952年のヒンデミット。
1926年版1幕目YouTubeを載せます。
冒頭はオーケストラのユニゾンで幕を開けます。とってもショッキング。
しばらくすると男女の合唱が絶叫します。とってもショッキング(2回目)。
開始2分で頭をぶん殴られたかと思うような叫び声で持っていかれます。
たぶん民衆が「殺人犯を捕まえてくれ!!」って叫んでいるのだと思います。鬼気迫ってます。
この鬼気迫っている感じが、1920年代のヒンデミットらしいなあと思います。
私事ではありますが、日本初演の公演には行くことができなかったので、また日本で公演されることを楽しみにしています。
2013年がオペラ《カルディヤック》唯一の機会になりませんように。むりでしょうか。
参考文献(いずれも2016年12月5日閲覧)