THE GLENN GOULD READER
ピアニストのグレン・グールドさんがヒンデミットについて書いた文章があります。
グールドさんの書いた文章やインタビューがまとめられた、こちらの本です。背表紙の厚さが2,5センチあり、なかなか分厚い書物です。余談ですが、ネイティブの方いわく「ジョークがいちいち面白い」とのことでした。知識を得るのみならず、読み物としても楽しめる本のようです。英語ですが。ありがたいことに日本語版も出版されています。
この本に、ヒンデミットについて触れている文章が2つあります。以下それぞれの題名になります。
・HINDEMITH:WILL HIS TIME COME? AGAIN?
・A TALE OF TOW MARIENLEBENS
今回は前者の文章を見ていきます。
文章のタイトルを訳すと「ヒンデミット、彼の時は来るのかな?もう一度?」といった感じでしょうか。再び余談ですが、この文はグールドさんがヒンデミットのピアノソナタ集をレコードで発売した際、レコードと一緒についてくるライナーノーツ(冊子)に書いたもので、4ページほどの分量です。
細かいところを読んでいくと、面白い言い回しがちょこちょこあるのですが、そういうのはざくっと切り捨てて、要点のみ拾います。
・1930年代、ヒンデミットの評判は絶頂に達したにもかかわらず、当時のどの音楽思想に属するのかが分からない。
・ヴェーベルンとの比較が分かりやすく、ヴェーベルンは生きていた当時、あまり名の知れた作曲家ではなかったが、現在において彼の功績は計り知れない。ヒンデミットはその逆である。
・ヒンデミットは後期作品になると、作品に自身の論理を用いて一貫性を持たせたが、初期作品にはあったエクスタシーや情熱的な部分はなくなっていく。
・ヒンデミットの作品で演奏の機会を確保したものは一握りで、それ以外は学生演奏会のプログラムに載るか、オルガン演奏会、または保存用のレコードに演奏されるだけである。これは残念なことだ。
・ヒンデミットの売りは、理性でもって作られたプロットと、エクスタシーが混ざっていることである。
・ヒンデミットは、これから何度も評価されなおすのではないか。未来のことはわからないけれど、彼がいたことは評価しなければならない。
なんだか、ヒンデミットの評価が高いですね。
この文の中には、引き合いに出した作曲家や曲が沢山あります。その一つ一つに、なるほど、とうなづいてしまいます。面白い文章なので、ご一読されてみてはいかがでしょうか。英語ですが。
今回は、英語版と日本語版、両方を見ながら意訳した文章の抽出になりました。疑問点、おかしな点などありましたら、ご指摘いただけると幸いです。